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ナツミ・レオタード・ジョンソン2世

黒歴史もいつかは武勇伝になる #7

私は過去を振り返りません。

振り返らないのではなく、振り返りたくないのです。

なぜなら、黒歴史ばかりだから。

今日は、そんな私の数ある黒歴史の1つを書きたいと思います。

あれは、自分が社会不適合だと気づき始めた頃の話。

会社勤めに疲れた私は、とりあえず当時働いていた会社に突然辞表を突き出した。

これで、晴れてニートだ。
しばらくは、ニートを楽しむぞ。
と最高にハッピーな気分だった。

だか、私は大事なことを忘れていた。

そう、

私には友達が居なかった。

友達が居ない私は、1人で遊ぶしかなかった。

ヒトカラ
漫画喫茶
映画
ショッピング
・・・・・

1人でできることをとりあえずやってみた。

・・・3日が限界だった。

私にはニートは無理だ。
それがはっきりとわかった3日間だった。

・・・これからどうしようか。

・・・会社勤めには戻りたくない。

・・・何か新しいことに挑戦しようかな。

・・・挑戦するなら大きなことをやってみたい。

・・・夢はでっかくだ。

悩みに悩んだ。

そして私は決めた。

芸能人になることを。

冗談ではありません。
当時の私は本気で芸能人になってやろうと思ったのです。
知り合いに芸能をやってる人が居たから、それに影響されたのかもしれません。
あの華やかな舞台に一度立ってみたいという好奇心からなのかもしれません。
自分もやってみたい。
素直にそう思ったのです。

・・・・・

早速、どこかで芸能オーディションをやってないかネットで探してみた。

案外すぐに見つけることができた。

もちろん、何の迷いもなく応募する。

もちろん、希望は、

「俳優」

っと、

ゴリゴリに加工した写真を添えて、自信満々に書類を送った。

・・・・・

後日、書類審査の結果が届く。
まさかの合格だった。

あんなゴリゴリに加工してても受かるものなのか?
それとも加工に気が付かなかった?

疑問に思ったが、どちらにせよ、合格したことには変わりない。
ガッツポーズをして喜んだ。

オーディションまで1ヶ月。

普通なら、それまでに身体を仕上げたり、肌の調子を整えたりすると思う。

だけど、謎の自信に満ち溢れていた私は、特に何もしなかった。

なんなら既に合格した気でいたくらいだ。

ちょいデブのぽっちゃり体型。

その状態で挑むなんて狂気の沙汰だ。

・・・・・

オーディション当日。

会場にルンルン気分で向かう。
あー、私も晴れて有名人か。
待ってろよ、億万長者。

気分は既にハリウッドスター。
芸能人を意識した歩き方をしてみる。

予定時間30分前に芸能事務所に着いた。

事務所に入るなり、異様な雰囲気に感づく。

誰1人笑顔がないスタッフ。
愛想0で黙々と案内している。
みんな死んだような目をしていた。

そして、そこに集まる100人程度の候補者。

闘志むき出しの野郎ども。

ピリつく会場。

和気藹々とした会場を想像していったハッピー野郎は、ここが戦場であることを思い知らされた。

その雰囲気に思わずちびりそうになる。

だが、やるしかない。

自分に言い聞かせる。

周りを見渡せば、イケメンだらけ。

こんな奴らに私は負けない。

ちょいデブのパンパンに浮腫んだ顔のハッピー野郎に少しだけ闘争心が湧く。

待ち合い室で呼ばれるのを待つ。

今回のオーディションは10人1組で行われるみたいだ。

それに合格した人のみ次のステージに進める。

よし、やってやる。

私ならできる。

そう言い聞かせる。

・・・・・

私の組みの出番までだいぶ時間があった。

待ち時間が途方もなく長く感じる。

待ってる間が1番緊張する。

恐らく周りもそうだろう。

みんなの緊張が伝わってくる。

本来は、この待ち時間の間にオーディションでのアピールを練習するのだろう。

だけど、初めてのオーディション。

ただ挨拶するだけだと思っていた。

その無知なせいで、とんでもないことをしでかすことをこの時の私はまだ知らないのであった。

・・・・・

長い待ち時間の後、ようやく私の組みが呼ばれる。

よし、やってやるぞ。

頬を両手で強く叩き、鼓舞する。

1列に並ばされ会場に向かう。

緊張状態が長かったせいか、身体がなんだかおかしい。

少し広めの部屋に案内された。

10人分の椅子が1列に用意され、その前には3人の審査員。

もちろん無表情。
誰も目をあわせようともせず一点をずっと見つめてる。
ピクリとも動かない。

ここの事務所はこれを徹底してるのか?
それともみんなやりたくないのか?
それとも私たちを試してるのか?
よく分からない。
とりあえず、みんなの目が死んでいる。

なんなんだ、この空間は。

不安になる私。

そして、少しの間を置いて審査員の1人が抑揚のない声でこう言う。

審査員「では、今から1人ずつ前に出てきてアピールをお願いします。その後、こちらで審議し合否を発表します。では、左端の方からお願いします。」

みんなどんな挨拶をするんだろう。
そう考えていた。

緊張のあまり審査員が”アピール”と言ったことに気が付かなかった。

そしていよいよ始まるオーディション。

私の順番はというと、最後から3番目だった。

最初の候補者が立ち上がり、中央に移動する。

「エントリーNo.○○ 東京から来ました。今日はよろしくお願いします。」

ピース綾部似のイケメンだ。

自信があるのだろう。

堂々とした立ち振る舞いだった。

そして彼が言う。

「武田鉄矢のものまねをします。」

レオみ

???

俳優オーディションなのに彼はモノマネをすると言い始めた。
とんでもないやつだと思った。

そして、彼はやるのだ。

「どうも〜。武田鉄矢で〜す。人と言う字は人と人が支え合ってま〜す。」

お決まりの鉄矢ゼリフを想像を超えたうまさで言った。

「おーーーーー」
候補者がざわつく。

完成度100%のモノマネだった。

モノマネのクヲリティに関心したものの、私の中である疑問が生まれる。

・・・挨拶じゃないの?

そしてふと審査員を見る。
・・・相変わらずの無表情。

次の候補者が立ち上がって中央に行く。

「エントリーNo.○○、福岡から来ました。本日はよろしくお願いします。」

自信に満ち溢れた今風のイケメンだった。

そんな彼が言う。 

「アクロバットをします。」

レオみ

やっぱりか。。。

何かをしないといけないことにようやく気づく。

そして、絶望するのだ。

私は何をすればいいのだろう、と。

モノマネなんてしたことなんてない。
アクロバットなんてしたことない。
今までそういうことを避けてきた。

脳をフル回転させる。

だけど何も思いつかない。

その間もどんどん審査が進んでいく。

モノマネをするやつ。
ヘンテコリンなダンスをするやつ。
歌を歌い出すやつ。
1発芸をするやつ。

着実に私の番まで迫ってきてる。

どうしよう、

どうしよう、

どうしよう、

何も思いつかない。

そして、私の前のイケメンが終わった。

「では、次の方」

私の出番だ。

とりあえず、モノマネでいこう。
そう覚悟を決めた。

そして、元気よく

「はい!」

と返事をして中央に行く。

「エントリーNo.○○ 東京都から来ました、レオみです。よろしくお願いします。」

大きな声で元気よく挨拶をした。

手足が震えてしまう。

モノマネなんてできるのだろうか。

だけど、もう腹をくくるしかない。

私ならできる。
そう心の中でつぶやいた。

そして、元気よく言う。

「モノマネをします!!!」

目を瞑り、深呼吸して、精神を統一させる。

ふーっと息を吐く。

そして、

大きく口を開けてこう言った。

「メェ〜〜〜〜〜〜」

会場全体に羊の鳴き声が響き渡る。

息が続く限り頑張った。

レオみ

ゼェ・・・ゼェ・・・ゼェ・・・

ロングブレスのせいで息切れをしてしまう。

息を整えるために目を瞑り、深呼吸をする。

初めての羊のモノマネにしては上手くいったと思った。

そして審査員の顔をチラリと見る。

無表情だった審査員の顔から少しだけ笑みが溢れていた。

嬉しくて嬉しくてたまらなかった。

・・・勝った。

そう確信した瞬間だった。

そして、清々しい声で、

「ありがとうございました」

と言い席に戻った。

席に戻るときに、候補者みんなが変人を見るような目で私を見ていたのが少しだけ気になった。

けど、そんなことなんて私はどうでも良かった。

私の合格は決まったも当然なのだから。

・・・・・・

そして、後日合否の通知が来た。

そこには、もちろん、

不合格の3文字が記載されていた。

・・・・・・

これが私の黒歴史。

人生最大の汚点かもしれません。

だけど後悔はないのです。

もちろんもう一度同じ経験をしたいかと問われたら絶対にNoです。

過去になんて絶対戻りたくはありません。

だけど、時が経って思うのです。

あんなアホみたいなことをしてた自分ってめっちゃアホやんって。

時が経てば笑い話にできるのです。

黒歴史=武勇伝。

そう思えば、どんな黒歴史も乗り越えれそうです。

今日も最後まで読んでくれてありがとうございます。

では、ごきげんよう。

レオみ☆

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この記事を書いた人

趣味は、妄想と分析。日常の些細なことをきっかけに妄想と分析をしてしまう癖あり。好きな食べ物はチョコパイ。シュールなお笑いが大好き豆腐メンタルな美少女アイドル兼男の子(ゲイ)。いつか素敵な王子様が見つかることを夢見てる。
現在イギリスに在住。

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