最近、職場にまた新人が入社した。物静かなのに眩しいオーラを放つフィギュアスケーターのイケメンハーフ、スティーブン。
イケメンフィギュアスケーターがなぜこの職場に入って来たのかは全くもって理解不能だけれど、人材不足が深刻化している私の職場にとっては、どんな理由であれ彼が入社してくれるのはありがたかった。
何より、マチコが早速彼にメロメロになって、乳をゆさゆさ揺らしながら上機嫌になったことが、職場の雰囲気的には一番のプラスだった。
彼の面接をした後に小声で、
イケメン来た♡
って私たちに言って来た時は、全身に鳥肌がたった。
面接の時点でマチコのお気に入りになったスティーブン。
ゴボウ(♯28)に少しだけ同情してしまうほど、彼への扱いに雲泥の差を感じた私は、「ヲンナって怖い生き物ね・・・・。」と心底思った。
そして、イケメンのお陰で女性ホルモンが大量に分泌されたマチコを含めた職場のヲンナたちのお肌がスベスベになってる気がした。
ヲンナたちがみんな、女子になってく・・・・。そんなヲンナたちを羨ましく思いながら、男性ホルモンを分泌しまくるヲカマ。
心なしか毛がふさふさになった気がするわ・・・。
そんな職場のヲンナ、ヲカマを虜にしていく彼のニックネームはもちろん「王子」。
そのニックネームが似合う人もなかなかいないんじゃないかしら?ってくらいに彼は輝いていた。
だけどその反面、物静かな王子は表舞台に本当に立ってるのかな?って疑っちゃうくらい笑顔が少なかった。
緊張してるだけなのかしら・・・?
ストレート男児が苦手な私は、彼と一緒に仕事ができるのか正直なところ不安があった。
ましてや何を考えてるか分からない、王子のような物静かでクールなイケメンは私の苦手とする分野だ。
ただでさえ、こちらが話すのに緊張するのに、何を考えてるか分からないなんて、【卑弥呼(♯19)】の私も絶望するほどにメンタルがやられちゃう。
初めのうちは頑張って王子に話しかけたり、上目遣いで盛大に乳を揺らしてみたり、持ち前のハイテクニック小ボケをかましたりしたけれど、全てが空回りに終わった。
「出だしの絡みを間違えた。」と思った私だったけど、「ここで働くのも残りわずかだし、とりあえず攻めるしかない!嫌われてもどうせ今後会うことないだろうし!」って考えたら何でもできた。
その時の私はある意味、無我の境地というやつに入っていた気がする。
ただね・・・、普通の会話をしようとしても、基本的にこちらから声をかけないと話すことはないし、話をしててもこちらからボールを投げるだけで決してボールを投げ返してこない、そんなヒアリングスタイルの会話だったから、私が頑張るしかなかった・・・。
そんな王子との会話に四苦八苦していたある日のこと、王子から、
マチコさんって怖いですよね・・・。
といきなりカミングアウトをされた。
詳しく聞いてみると、どうやらマチコから醸し出される「ボス猿」感がどうしても苦手みたい。
「ボス猿」というパワーワードに全てを持っていかれそうになりながらも、そのカミングアウトに、「少しは打ち解けてくれたのかな?」と思えて、素直に嬉しかった。
マチコのことになると少しだけ饒舌になる王子。
「そんなに溜め込んでたんだ・・・」って思いながらも、マチコの不人気ぶりに笑ってしまう私。
こんなにも周りから嫌われる人もなかなかいないだろう。
彼への接し方は他の人に比べると格段に優しかったし、声のトーンも1オクターブくらい高かったはずなのに・・・・それが逆に彼への恐怖心を増長してしまったのかしら?
・・・・・いろいろ原因を考えたけど、「ドンマイ、マチコ♡」の言葉以外見つからなかった。
どう足掻いても嫌われる人は嫌われるみたいだわ。
それからは相変わらず無口でクールな王子だったけど、(会話で)20球に一回は向こうからも球を投げてくれるくらいの距離感に縮めることができた。
そして、少しずつだけど彼のことを知ることができた。
まず、彼の家族はお金持ちなこと。
将来は、金融系の仕事をしながら親の会社を継ぐことを考えてるみたい。
どちらにせよお金持ちになる世界しか待っていない王子。
効果はないと分かっていながらも、本能的に乳を寄せてしまうレオみちゃん。
そんな私の溢れ出すフェロモンに、もちろん王子は気が付いてくれない。
とほほ・・・涙
そして、案外庶民派的なところもあるということ。
例えば、ヘアーカットは3000円くらいのところに行くことや、趣味はYouTubeを見ること(はじめしゃちょーが好きみたい)、お友達と家で宅飲みをするのが好きなこととか。
私たちがするそれらとなんら変わらないことに驚きを隠せない私に、王子が、
お金以外にも大切なことがあると思うから。
とサラッと言って来た。
爽やかすぎて、眩しくて、王子の顔を直視することができなかった私は、とりあえず目を背けて乳を揺らすしかできなかった。
彼にとってお金はあまり必要のないものだと思ってるかもしれないけれど、「お金よりも大事なものがある」って言えるのは、それはお金がある人が言える話であって、お金がない人が言うとそれはただの強がりに過ぎない。
だから、彼が庶民的な生活を選択して「お金よりも大事なもの」を彼は掴んでる、或いは掴もうとしてるのも、それは裏を返せばお金があるからできることだと私は思うの。
19歳の王子のその一言から、「やっぱりお金って大事だわ」って改めて思ったレオみちゃん。
そして、王子のお父さん(生粋のイギリス人)は全身に刺青が入ってること。
以前は顔にも入ってたらしいけれど、それは流石にレーザーで取ったみたい。
プライベートの内容すぎて流石の私も深くは聞けなかったけれど、父親の存在を無視するほどに王子は彼が嫌いで、そして大して必要のないものだと思っている・・・ということはひしひしと伝わってきた。
実際、お金があるのもお母さん側らしい。
お金も稼いでない、家事も全くしない、家族に何も貢献しない、そんな父親が彼からしたら許せないようだった。
そして、そんな父親の血を色こく受け継いだ弟はイギリスで不良をしてるらしい。
- 全身刺青のパパ
- お金持ちのママ
- 寡黙なフィギュアスケーター
- 不良の弟
一体なんなんだこの家族は・・・。
アベンジャーじゃない・・・。
なかなかロックな家族構成の中に寡黙な王子がいるって想像すると笑ってしまう。
そんな話せば話すほど面白い話が出てくる王子と、率直に仲良くなりたいと思った。
普通とは違う人生を確実に送ってる王子。
私が想像できない、そんなことある?って話をたくさん持ってる王子との会話は素直に楽しく感じた。
どんどん心を開いてくれる王子。
そしてだんだんと距離が縮まっていってることを実感して嬉しくなる私。
もちろん基本的に彼の寡黙っぶりと笑顔の少なさは変わらなかったけれど、でもそれも彼の魅力の1つでしょう、って私は思えるくらいには彼を知ることができた。
王子とこれからもっと距離を縮めれたら嬉しいな。
ところで話は変わるけど、
うちの職場にはトイレが二つしかない。
男子トイレと女子トイレの一つずつだ。
そして両方とも同じドアを入った先にある。
だから、社員が使うときは必然的に1人が行ったらその人が用を終えるまでトイレに行けないっていう空気になっている。
それは少しだけめんどくさいなと思っていたのだけれど、でもまーセンシティブなことだし、隣通しじゃー気持ちよくトイレもできないからしょうがない、って思っていた。
そんなある日、私は久しぶりに王子と一緒に働くことになった。
仕事にも慣れてきた王子は、基本的に私のサポートなしで仕事をできるようにもなっていたのもあって、お互い干渉することもなく黙々と自分たちの仕事をこなしていた。
もちろん寡黙でクールな王子から私に話をしてくることはなく、話をするとしたらいつも通り私の方からボールを投げるだけだった。
会話に困りながもその日は夜遅くまで王子と一緒に仕事をした。
仕事を終えて、片付けをした後、私はトイレに行った。
私は仕事終わりにトイレに座ってゆっくり用を足すことがこの所の癒しだ。
誰にも邪魔されない1人だけの空間。
それがたまらなく好きだし、心を落ち着かせてリフレッシュすることができる。
もちろんその日もいつも通りに、トイレでリフレッシュして帰ろうと思い、職場のみんなに
ちょっとトイレ行ってきます。
と言って、「私が今からトイレ行くから誰もトイレ行けなくなりますよ」っていう隠れ合図を送ってから、トイレに向かった。
そして、
トイレに入り、ズボンとパンツを下ろし便座に腰を下ろす私。
疲れがどっと押し寄せてくる。
そして、
プ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ブヒッ。
一日中我慢していたおならを豪快に出す。
あーーーーやっと出せた
気持ちよくおならをして、用を足した私。
今日もよく頑張ったわ私。えらいえらい。
って、豪快にオナラをした自分に言い聞かせる。
そして、立ち上がり、パンツとズボンを上げる。
そして、手を洗ってトイレを出た。
・・・お疲れ様です。
そこには、少しだけ顔が引き攣っている王子が立っていた。
これが私と王子の最後の日になったことは誰も想像できないだろう。
もう王子に会うことはない私。
だから、どんな顔をして会えばいいのか、いつも通りに話してくれるのか、って悩む必要がない。
悩む必要なんてないし、実際大して引きずってもいない。
出るものはしゃーなしってくらいに思っている私なんだけど、「レオみちゃん=美少女」という当初の王子の認識が「レオみちゃん=おなら」っていうイメージに最後の最後に植え付けてしまったのは少しだけ後悔してしまったし、あんな特大な屁を聞かしてしまって本当に申し訳ないと思った。
本当にごめんなさい。
そして、王子様と素敵な結婚生活は「オナラ」と共に終了したことをここで報告します。
ここで私が言いたいことは、
「アイドルだっておならするんです!」
っていうこと。
以上、
最後まで読んでくれたそこの君。大好きだぞ♡
これからも屁こきのレオみちゃんをよろしく頼むぞ♡
では、ごきげんよう。
レオみちゃん♡
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